■PMアラカルト_No.6
COBITのフレームワーク
2005.02.15
前回は、企業/組織のITガバナンスの成熟度を測るモデルであるCOBIT(Control OBjectives for Information and related Technology)の「計画と組織」領域で定義されているプロジェクトマネジメント・プロセスの成熟度について、その成熟度モデル、CSF、KGI及びKPIを紹介しました。今回はその中のCSF、KGI、KPIの意味を明らかにした上で、COBITの活用方法の例を示します。
まず、企業/組織はその活動と成果をモニタリングし、コントロールしなければなりません。例えば、最上位の計画である経営計画、それに基づいて作成される情報化計画などについて、それらが確実に実行されているかどうかを継続的に評価して、計画と実績の差を認識し、もし差があればその原因を探って是正措置を策定して実施する、または計画自体の見直しを図るなどの手立てをとります。この一連の活動は、企業/組織のビジネス戦略やIT戦略の達成に合理的な保証を与えるプロセスとして形成されるべきものです。
特にITガバナンスの向上に向けてPDCC(Plan-Do-Check-Correct(改善))サイクルを中心にしたプロセスを形成する場合、COBITのようなフレームワークが有効になります。
COBITフレームワークのコンポーネントとしては、成熟度モデル、CSF、KGI、KPIがあります。成熟度モデルについては、前回のPMアラカルトNo.5で紹介したので、ここではCSF、KGI、KPIについて説明します。
1.CSF(Critical Success Factors − 重要成功要因)
COBIT成熟度モデルのレベルごとに定義されたITプロセスを、適正に実行するために抽出された要因のことです。
ITプロセスのコントロールのために何が必要なのか、実行すべき最も重要な活動は何かを示したもので、
将来の目標を踏まえて実行すべき最重要事項と言うべきものです。
【プロジェクトマネジメント・プロセスの成熟度に関するCSFの例】:
「経験豊富で熟練したプロジェクト・マネジャーがいること」、「承諾され、標準化されたプロジェクトマネジメント・
プロセスがあること」、「全社でプロジェクト・リスクの評価方法が定められ実施されていること」、
「すべてのプロジェクト計画に、明確でトレース可能なWBS、合理的で正確な見積り、スキル要件、
トレースすべき課題、品質計画、透明性のある変更プロセスがあること」など
2.KGI(Key Goal Indicators − 重要目標達成指標)
プロセスには、それによって達成されるべき最終目標(Goal)があります。
KGIは、その目標の達成度を評価するための尺度です。KGIは、目標の達成に向けて遂行されるプロセスの
状況を表す計測可能な指標として設定され、プロセスの遂行中にモニタリングされて定量的かつ
事後的に評価されます。なお、ここでのプロセスとは、ITプロセスのみを指すのではなく、経営プロセスなど、
より上位のプロセスのことです。
【プロジェクトマネジメント・プロセスの成熟度に関するKGIの例】:
「計画された期限内、予算内に完了したプロジェクトの増加件数」、「正確なプロジェクト・スケジュールや
予算情報が利用可能であること」、「繰返し発生する共通的なプロジェクト問題の減少」、
「プロジェクト・リスクをタイムリに識別できること」、
「プロジェクトマネジメントにおける意思決定のスピードアップ」など
3.KPI(Key Performance Indicators − 重要業績達成指標)
KPIは、ITプロセスがその目標に向けて遂行する能力の達成度(Performance)を把握するための指標です。
KPIによって、ITプロセスがその目標達成に向けてどの程度機能しているか判断することができます。
これは、目標達成の可能性、即ち、将来の成功/失敗の可能性を推測する先行指標でもあります。
KPIはCSFの達成指標になりえるため、その継続的なモニタリングと対応によって、ITプロセスの継続的改善に寄与します。
【プロジェクトマネジメント・プロセスの成熟度に関するKPIの例】:
「プロジェクト・チーム・メンバーあたりのプロジェクトマネジメント研修受講日数」、
「プロジェクトのマイルストーンと予算のレビュー回数」、「プロジェクト完了後のレビュー実施比率」、
「プロジェクト・マネジャーの平均経験年数」など
4.CSF、KGI、KPIの関係
企業の競争力強化のために、経営者のビジョンやミッションからKGIを決定し、
それに対して内部・外部環境分析を行ってKGI達成のためのCSFと、CSFの達成指標であるKPIを設定して、
CSO(Chief Strategic Officer:経営戦略責任者)の経営目標を明確にします。
次にCOBITの活用方法の例を紹介します。
【活用手順】:
(1) 企業/組織のITガバナンスを評価するために、ITガバナンスを表すデータを収集
して、
そのコントロール目標となるKGI、KPI、CSF別に達成度を確認する。
(2) 確認された達成度に基づき、COBITの成熟度モデルが定める成熟度レベル(レベル0〜5)をアセスメントし、
現状の成熟度とする。
(3) 目標とする成熟度レベル、例えば現在より一つ上のレベルの成熟度を目標に据えて、現状とのギャップ分析を行う。
(4) ギャップ分析にしたがい、目標とするKGI、CSF/KPIを選定して、それらの目標値を決める。
(5) 所定のIT活動を通して、ITプロセスのKPIをモニタリングする。
(6) 所定のIT活動の区切りで、KPIの達成度と成熟度モデルに基づきITプロセスごとの成熟度レベルを算定する。
目標レベルに到達していなければ、その原因を分析して改善を図る。
目標レベルに到達していれば、その定着化を図り、さらに上のレベルを目指す。
参考文献: (1)ITC専門知識教材 情報化の成熟度 財団法人社会経済生産性本部
(2)ITC専門知識教材 モニタリングとコントロール NECソフト株式会社
(3)COBITマネジメントガイドライン第3版 ITガバナンス協会