■PMアラカルト_No.2
PMBOK 統合マネジメント考
2005.10.05
前回はPMBOKガイド第3版について2000年版からの主な変更点をリストアップしました。
今回からは数回にわたってその特徴を概観します。今日はプロジェクト統合マネジメントを取り上げます。
プロジェクト統合マネジメント(Project Integration
Management)には7つのプロセスがあり、それらは立上げ、計画、実行、監視コントロール、
終結という5つのプロセス群に配置されています。(添付1参照)
統合マネジメントの詳細についてはPMBOKガイド第3版をご覧いただきたいのですが、
ここでは統合マネジメントの特徴から以下の3点をピックアップして考察します。
第3版ではこれらの特徴がより明確になったと考えるからです。
(1)車輪の軸としての存在
(2)コントロール・タワーの役割
(3)変更管理の要
1.車輪の軸としての存在
PMBOK第3版における統合マネジメントは、2000年版から最も変った知識エリアと言ってよいでしょう。
統合マネジメントは、他の8つの知識エリアを横断的に捉える知識エリアで、
謂わば車輪の軸のような役割を有したものと言えます。すなわち、プロジェクトマネジメントの各プロセスは
それぞれ影響し合いながら実行されていくものですが、それら影響を適切にマネジメントして、
5つのプロセス群を円滑に遂行する役割を担ったものが統合マネジメントでした。
しかるに、2000年版までは、立上げと終結のプロセス群には統合マネジメントに属する
プロセスが存在せず、プロジェクトやフェーズの開始にあたる「立上げプロセス」
はスコープ・マネジメントが、また、プロジェクトやフェーズの完了にあたる「完了手続きプロセス」
はコミュニケーション・マネジメントが担っていました。
しかし、第3版では、旧「立上げプロセス」が「プロジェクト憲章作成プロセス」と
「プロジェクト・スコープ記述書暫定版作成プロセス」の2つに分割・詳細化され、かつ、
これら2つのプロセスは統合マネジメントに配置されました。
また、旧「完了手続きプロセス」が「プロジェクト終結プロセス」として内容が強化されて、
これも統合マネジメントに配置されました。
これによって、本来の統合マネジメントの機能がより明確にされ、
PMBOKの構造が一貫性を持った分かり易いものになりました。
2.コントロール・タワーの役割
始めに、添付2のフロー図で統合マネジメントの各プロセスが置かれている位置を
確認してください。すべてのプロセス群の入口に統合マネジメントのプロセスが置かれていることが
分かります。
特に計画プロセス群では、2000年版では「プロジェクト計画の策定プロセス
」が計画プロセス群の最後に置かれ、プロジェクトの計画に関わるすべての
プロセスの遂行結果に基づいてプロジェクト計画が策定されることを示していました。
これは実際的で分かり易いフローでした。
ところが第3版では、
上記プロセスに相当する「プロジェクトマネジメント計画書作成プロセス」が
計画プロセス群の先頭に置かれており、奇異に見えます。
しかしこれは
、計画プロセス群の中の各プロセスが、時には並行して、時には行きつ戻りつして
繰返し行われるものであり、それを統合マネジメントのプロセスが計画プロセス群の中で
適切に調整・コントロールすることを示している、と考えると納得がいきます。
終結プロセス群も同様で、第3版では「プロジェクトの終結プロセス」から「契約終結プロセス」
に矢線がありますが、実際の実行順序は逆でしょう。しかし、統合マネジメントのプロセスが
終結プロセス群をコントロールしていると考えると、この矢線は納得できます。他のプロセス群も同様です。
このように、統合マネジメントのプロセスから他の知識エリアのプロセスへの矢線は、
プロセス間の順序関係やデータの流れを表しているのではなく、
そのプロセス群全体をコントロールするという意味の矢線だと考えられます。
別な言い方をすると、統合マネジメントのプロセスがメイン・ルーチンで、
他の知識エリアのプロセスはそのサブ・ルーチンという構図です。
すなわち、統合マネジメントの各プロセスは、それが属するプロセス群におけるコントロール・タワー(管制塔)
なのです。
ただ、PMBOKガイドにはこのことが明確に説明されておらず、また、
プロセス群の図に描かれている矢線も、プロセスやデータの流れを示すものとコントロールの
方向を示すものとの表記上の違いはありません。
3.変更管理の要
第3版では、プロジェクトの変更管理に関する諸活動とそのための仕組みが
2000年版に比べはるかに詳細に定義されています。その活動の種類とフロー、
及び中心となるシステムを以下に示しますが、「統合変更管理プロセス」がその要として
機能していることが分かります。
(1)変更要求のフロー
所定のプロセスから発生した変更要求(スコープ、スケジュール、コスト、
各種計画書などへの変更要求)は、『要求済み変更』として「統合変更管理プロセス」で
適切に処理され、『承認済み変更要求』または『却下済み変更要求』が発行されて、それぞれ所定のプロセスの
入力になります。特に『承認済み変更要求』を実行する(実際に変更を行う)のは「プロジェクト実行の指揮・
マネジメント・プロセス」で、その結果が『実施済み変更要求』となります。
(2)是正処置・予防処置のフロー
所定のプロセスから出力される『提案済み是正処置』や『提案済み予防処置』も「統合変更管理プロセス」
で適切に処理されて、それぞれ『承認済み是正処置』、『承認済み予防処置』となって
「プロジェクト実行の指揮・マネジメント・プロセス」に入力されて処理されます。その結果、
それぞれ『実施済み是正処置』、『実施済み予防処置』となります。
(3)欠陥修正のフロー
「プロジェクト作業の監視コントロール・プロセス」と「品質管理プロセス」から出力される
『提案済み欠陥修正』は、「統合変更管理プロセス」で処理されて『承認済み欠陥修正』となり、
「プロジェクト実行の指揮・マネジメント・プロセス」に入力されます。その結果、『実施済み欠陥修正』となって
「品質保証プロセス」に入力されます。この修正処理の結果は「統合変更管理プロセス」や
「品質管理プロセス」で確認・レビューされて『確認済み欠陥修正』が出力されるという仕組みです。
(4)コンフィギュレーション・マネジメント・システム
第3版では、「統合変更管理プロセス」の根幹を成すコンフィギュレーション・マネジメント・システムの
機能について詳細に定義されています。特にコンフィギュレーション・マネジメント・システムには
変更管理システムが内包されているという点に注意してください。
(「PM Tools A to Z No.23 コンフィギュレーション・マネジメント(1)」参照)
添付1:プロセス群と知識エリアによるプロジェクトマネジメント・プロセスの分類
添付2:PMBOKR プロセス間の相互関係
参考文献: (1)PMBOK(R) ガイド第3版 PMI
(2)PMBOK(R) Guide Third Edition PMI
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