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PM雑記帳

■PMBOK ドリルダウン!_No.27
  リスクマネジメント (27)

2005.06.22

前回は、これまで学んだこと(リスクマネジメントのプロセス(計画、分析、対策))に基づき、演習課題を通じて理解を深めました。
今回は、その演習課題を活用して、リスクマネジメントとして主流となりつつある「標準リスクモデル」について考察してみましょう。


<標準リスクモデルとは何か>
  今まで学んできた、リスク事象、根本原因、発生確率等を考える上で、リスクモデルは大変有効です。具体的なメリットは、以下の通りです。
    1. モデルを使うとリスクの定量化ができます。
2. また、どのリスクを管理していくかを決定する助けになります。
3. 根本的な原因を指摘してくれるので、リスクの解決に有効な計画の立案が可能になります。
  また、以下で説明する「標準リスクモデル」を活用すると、大いにメリットを享受できると思います。
  まず、標準リスクモデルで使われている用語の説明をします。
(1) リスク事象:損失を「引き起こす」出来事または状態
(2) リスク事象のドライバー:プロジェクト環境の中に存在し、特定のリスク事象の発生へ導くと思われるもの
(3) リスク事象の発生確率:リスク事象が発生する見込み(確からしさ)
(4) (リスクの)影響:リスク事象が発生したら結果として生じるかもしれない、潜在的な損失
(5) 影響のドラーバー:特定の影響が起こることを確信させるような、プロジェクト環境中に存在しているもの
(6) 影響の発生確率:リスク事象発生の条件下における、影響の起こる見込み(確からしさ)
(7) 総損失量:リスク事象が発生した場合に生じる損失の大きさ
以上 です。
  それでは、前回の例題を基に、この標準リスクモデルに当てはめて考えてみましょう。
まず、前回の例題を改めて、以下に示します。

<例>
  現在、主人公の佐藤さんは、開発プロジェクトのプロジェクトマネジャーを任されています。要件定義工程が完了した時点で見積りを行なった結果、不正確なコスト見積りにより、コスト超過になるのではないかと心配するようになっています。 佐藤さんは、最も関心を持っている事象は、「製造工程の時点でコスト超過が明らかになる」です。また、その事象が発生した場合、経営者・顧客との軋轢(あつれき)、納期の遅れなど影響も考えられますが、「プロジェクトを中止」することに重大な懸念を抱いています。但し、中止の条件は不明です。 プロジェクトでは、見積支援ツールを用いていません。過去の蓄積データベースも存在しません。ファンクションポイントのような見積り尺度に基づいた資源見積りが行なわれていません。プロジェクトの規模、言語、技術要件、技術者スキル、その他の影響要因の考慮が見積り時に不十分でした。また、プロジェクト内には、見積り計測の専門家が存在しません。事業部長(上司)からは、要件定義の完了レビューで、見積りミスの懸念を指摘されています。尚、コス超過の予備は考慮していません。

 それでは、この例題を「標準リスクモデル」に当てはめた結論を以下の通り示します。


 この結論の導き方について、順を追って説明しましょう。
  まず、最初は、リスク事象を発見します。具体的なツールとしては、チェックリスト、あるいは、WBSを模造紙に書き出し、ポストイットを使って議論するのが有効ではないでしょうか。
  次に、リスク事象を基に、何故(WHY?)と問いかけながら、リスク事象のドライバーを発見します。
  具体的な作業イメージは、以下の通りです。

いかがでしょうか?
  次に、リスク事象を基に、影響、影響のドライバーを導き出します。
  具体的な作業イメージは、以下の通りです。

最後に、発生確率、総損失量を導き出します。

「標準リスクモデル」を活用する作業イメージはご理解頂けたでしょうか?
それでは、ここで、リスク事象と影響を分けないで、単純化した「単純モデル」で同じ例題を表現してみましょう。

 何かおかしいですね。このモデルでは、リスク事象を影響と区別することはできないため、コスト超過によるプロジェクト中止を防ぐための効果的な方法を発見することは困難となります。

 それは、最後に、「標準リスクモデル」と「単純モデル」の長所、短所を比較評価してみましょう。
  どのモデルを使うかは、組織で決めれば良いと思います。


 筆者は、研修講義では、「標準リスクモデル」を参考に、多少カスタマイズして活用しています。
但し、実際の現場コンサル活動では、「単純モデル」を多少カスタマイズしています。
  それでは、本日の説明を終わります。以下の参考文献は、非常に多くのことを教えてくれます。
ぜひ、一読されてみてはいかがでしょうか。

参考文献:「実践・リスクマネジメント」(プレストン・G・スミス+ガイ・M・メリット)(生産性出版)