リスクマネジメント (25)
前回は、定量的リスク分析の技法として、デシジョン・ツリー分析をご紹介しました。
本日は、リスク・シミュレーションツールを活用した、定量的リスク分析をご紹介します。
【KnowledgePLANを活用したリスクシミュレーション】
筆者は、PMのコンサルタント業務を行なっています。担当する顧客企業では、見積支援ツール(KnowledgePLAN)が導入されており、よくこのツールを活用して、QCDのリスクシミュレーションを行なっています。さて、そのツールを活用して、どのようなことが出来るのでしょうか? 以下の例題を基にツールの活用方法を考察してみましょう。
<例>
ある金融系商品システムの機能拡張作業を行ないます。開発言語は、COBOLで、追加・変更・削除・移行機能の規模は、100FP(約10,000ステップ)です。
この案件については、制約条件があります。それは、納期(3ケ月以内)、コスト(800万円)です。品質については、特に、顧客から目標が示されていません。但し、リリース後いつも品質の問題で、顧客と問題を起すことが多いので、この案件を始める前に、納品時点で、顧客にどの位の不具合も納品されることになるのかシミュレーションをしておく必要があります。
さて、皆さんが、この案件のリーダーの立場でしたら、社内の見積りデータ、見積りモデルを活用して、潜在不具合、納品不具合、不具合除去率を予測することができますか?
このKnowledgePLANを活用する場合、以下の情報を事前に与える必要があります。
1.規模に関する情報(FP、あるいは、ステップ、etc)
2.プロジェクト属性(スコープの確定状況、要員スキル、開発環境、etc)
品質(Q)、コスト(C)、納期(D)は、バランスの問題ですから、上記の例では、CDに制約を持たせると、品質上の問題が発生することになります。
KnowledgePLANでは、10,000件以上の過去情報を基に、今回の案件に近い情報を導き出し、情報を提供してくれます。
上記の例では、以下のような計測情報が算出されます。
| 潜在不具合 |
除去される不具合 |
納入される不具合 |
不具合除去率 |
| 186 |
86 |
100 |
46% |
この数字を上司に提示すると、当然、納入される不具合が多すぎる!! 何とかしろ!!ということで、制約条件の見直しが可能か? あるいは、制約条件はそのままで、品質向上策(レビュー強化、プロトタイプ実施、顧客関与を強める…)が実現できるかの検討を始めることになります。
ここでは、このツールの良し悪しを議論するのではなく、シミュレーションツールを活用する場合には、以下の点について留意する必要があることをお伝えします。
シミュレーションは、モデルを使ってある現象が起きる結果を模擬的に生成する方法です。
利点は、
・ 1つ1つ手で実施するよりも効率的に解を得られます。
・ 複雑なモデルでも想定結果が得られます。
欠点は、
・ 使うモデルの良し悪しが結果の精度を左右します。
・ どんなプロジェクトでも同一モデルが使える訳ではありません。
・ モデルが複雑だった場合、原因(入力)と結果(出力)の関係を見つけにくい場合があります。
筆者は、KnowledgePLANをリスクシミュレーションの有効なツールと判断して活用しています。但し、以下の点のついて留意する必要があります。
1.KnowledgePLANが使いこなせるには、一定の時間と、ノウハウが必要となります。
2.KnowledgePLANが持っている見積知識DBだけに頼るのではなく、自社の見積りデータを蓄積し、次回の見積り時に再見積もり時に再利用するメカニズムを構築することが、より精度を向上させる上で不可欠になると思います。
本日はここまでにします。お疲れさまでした。