前回までで、TOC(制約条件の理論)によるプロジェクトマネジメント手法(以下TOCのPM手法)の考え方と、その根幹がクリティカル・チェーンと呼ばれるリソース競合を加味したプロジェクトの最長パス及びプロジェクト・バッファーと呼ばれる集約された安全余裕のマネジメントにあることを説明しました。
筆者はこれまでTOCのPM手法を実践したことは無いので、この新しいプロジェクトマネジメント手法を従来の手法と比較して評価することは差し控えたいと思います。とはいうものの、今回は筆者なりに理解している当該手法について感じていることなどを記し、本テーマのまとめとします。
筆者は、しかしながら、上記のアプローチ方法については少し疑問を感じています。それは、プロジェクト・メンバーの自主性に重きが置かれないような作業形態で、メンバーのモチベーションを維持することができるだろうかということです。メンバーを信頼して、もっとメンバーに活動の自主性を求めてもいいと思っています。
なお、TOCのPM手法は、プロジェクトの対象分野(IT、製造、エンジニアリング、建設、プロセス、研究開発など)によってその適用性が異なると聞いたことがありますが、TOCのPM手法を実践された方の話をお聴きしたいところです。
このことに関連して、筆者のIT系プロジェクトマネジメントの経験から、TOCのPM手法が言うところの学生症候群などには、一般にこれまでも適切に対処されてきており、これに起因する問題はあまり発生していないのではないかと推測しています。それは、プロジェクト・メンバーの自主性を重んじることと、作業実態の精確な把握と綿密なコミュニケーションによりメンバーのフォローアップを行うこと、によってなされているはずです。
例えば、プロジェクト進行中は、日例、週例、月例などで進捗会議を行います。進捗会議はコミュニケーション手段の一つです。その中で作業状況を実態に基づき精確に評価し進捗を把握すれば、作業者が抱える問題などが見えてくるので適切に対処することができます。また、進捗報告でよくある心理に絡む問題の例として90%シンドロームというものがあります。これは、作業者は90%あたりまではほぼ予定通りに進捗を申告するけれども、90%前後から進捗が進まなくなり(進捗度がほとんど変化しなくなり)、中々100%にならないというものですが、これも進捗報告を作業実態から評価すれば防ぐことのできる例でしょう。
| 参考文献: | クリティカル・チェーン エリヤフ・ゴールドラット著 ダイヤモンド社 |