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PM雑記帳

■PM Tools A to Z_No.36
  クリティカル・チェーン(5)

2006.01.18

前回までで、TOC(制約条件の理論)によるプロジェクトマネジメント手法(以下TOCのPM手法)の考え方と、その根幹がクリティカル・チェーンと呼ばれるリソース競合を加味したプロジェクトの最長パス及びプロジェクト・バッファーと呼ばれる集約された安全余裕のマネジメントにあることを説明しました。
筆者はこれまでTOCのPM手法を実践したことは無いので、この新しいプロジェクトマネジメント手法を従来の手法と比較して評価することは差し控えたいと思います。とはいうものの、今回は筆者なりに理解している当該手法について感じていることなどを記し、本テーマのまとめとします。

  1. TOCのPM手法の位置づけ
    TOCのPM手法とは、リソース・マネジメントを考慮に入れた、あくまでもスケジュール・マネジメント技法の一つです。そのアプローチ方法から、プロジェクト工期の短縮問題に対応しやすいとされています。「TOCによるプロジェクトマネジメント手法」と呼ばれているので、これまでのプロジェクトマネジメント手法に替わるものとのイメージがありますが、そうではありません。したがって、PMBOKガイド第3版では、タイム・マネジメント知識エリアの「スケジュール作成プロセス」のツールと技法で、クリティカル・チェーン法として選定されています。

  2. プロジェクト・マネジャーの管理対象
    TOCのPM手法では、プロジェクト・マネジャーは3つのバッファー、即ちプロジェクト・バッファー、合流バッファー、リソース・バッファーを集中して監視・管理していればよく、これによりスケジュールに関して柔軟性のあるマネジメントができるとされています。

  3. プロジェクト・メンバーの心理の問題
    プロジェクトの成否は、すべからくプロジェクト・ステークホルダーの行動の結果としてあります。それ故に、プロジェクト・マネジャーは、例えばプロジェクト・メンバーの心理の問題に関心を持たないわけにはいきませんし、むしろ積極的にそれに関わるべきです。
    したがって、TOCのPM手法が、担当作業に時間的余裕があると中々着手しない「学生症候群」の問題とか、担当作業を早く終えてもそのことを次に続く作業者や管理者に報告しない問題とかの、人間心理からくる問題の回避を目指していることは、プロジェクトにおけるヒューマン・ファクター重視の方向性の一つとして理解できます。
    因みにTOCのPM手法では、このような心理上の問題回避のアプローチ方法として、作業者には担当作業スケジュールを前もって示さずに作業開始の指示が来るまで待機させ、作業者は指示が来たら即刻作業に着手してできる限り早くその作業を終えて報告することが重要である、としています。

    筆者は、しかしながら、上記のアプローチ方法については少し疑問を感じています。それは、プロジェクト・メンバーの自主性に重きが置かれないような作業形態で、メンバーのモチベーションを維持することができるだろうかということです。メンバーを信頼して、もっとメンバーに活動の自主性を求めてもいいと思っています。
    なお、TOCのPM手法は、プロジェクトの対象分野(IT、製造、エンジニアリング、建設、プロセス、研究開発など)によってその適用性が異なると聞いたことがありますが、TOCのPM手法を実践された方の話をお聴きしたいところです。

    このことに関連して、筆者のIT系プロジェクトマネジメントの経験から、TOCのPM手法が言うところの学生症候群などには、一般にこれまでも適切に対処されてきており、これに起因する問題はあまり発生していないのではないかと推測しています。それは、プロジェクト・メンバーの自主性を重んじることと、作業実態の精確な把握と綿密なコミュニケーションによりメンバーのフォローアップを行うこと、によってなされているはずです。
    例えば、プロジェクト進行中は、日例、週例、月例などで進捗会議を行います。進捗会議はコミュニケーション手段の一つです。その中で作業状況を実態に基づき精確に評価し進捗を把握すれば、作業者が抱える問題などが見えてくるので適切に対処することができます。また、進捗報告でよくある心理に絡む問題の例として90%シンドロームというものがあります。これは、作業者は90%あたりまではほぼ予定通りに進捗を申告するけれども、90%前後から進捗が進まなくなり(進捗度がほとんど変化しなくなり)、中々100%にならないというものですが、これも進捗報告を作業実態から評価すれば防ぐことのできる例でしょう。


今回は、人間心理の問題にどうアプローチするかという点で、TOCのPM手法にやや疑問を呈した部分もありましたが、筆者としては、クリティカル・チェーンの考え方はリソース競合があるときのスケジュール・マネジメントの方法として、非常に有用なものと感じています。


参考文献: クリティカル・チェーン エリヤフ・ゴールドラット著 ダイヤモンド社

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