■PM Tools A to Z_No.33
クリティカル・チェーン(2)
2005.11.30
前回の続きです。今回はプロジェクトのボトルネックを守る方法その一としてプロジェクト・バッファーの話です。
プロジェクトの工期は、プロジェクトの最も長いパス、即ちクリティカル・パスの長さで決まります。したがって、クリティカル・パスがキープできなければ工期も達成できませんから、クリティカル・パスが制約条件となります。
今回は、とりあえずリソースの制約は考えずに、クリティカル・パスの管理にTOC(制約条件の理論)を適用します。
前回述べたように、アクティビティをほぼ確実に(例えば90%の確率で)完了する期間の見積りは、平均的に(例えば50%の確率)完了するそれの3倍にもなりうるが、その余裕のあるスケジュールでさえもキープできない、という現実があります。
そこでクリティカル・チェーン法では、クリティカル・パス上の各アクティビティに個別に見込んでいる余裕を集約して、クリティカル・パス全体の余裕としてクリティカル・パスの後ろにまとめて置きます。この集約された余裕のことをプロジェクト・バッファーと呼びます。
TOCは部分最適化ではなく全体最適化のアプローチを採りますので、各アクティビティが持っている余裕は、そのアクティビティで管理(部分最適化)するのではなく、それらを集約したプロジェクト・バッファーとしてプロジェクトで管理(全体最適化)します。
具体的なステップを見ていきましょう。
- プロジェクトの各アクティビティをその完了確率50%で見積り、クリティカル・パス(最長パス)を見出す。
このクリティカル・パスの長さは、完了確率90%で見積った時の三分の一程度のはずである。しかし、この期間での完了確率は50%しかないので、クリティカル・パス上の各アクティビティの担当者にとっては<余裕が無い見積り>である。
したがって、各アクティビティの担当者は余裕が無いスケジュールで作業するので、前回挙げた人間心理の問題、即ち、早く完了しても次のアクティビティにそのことが伝播しないことや学生シンドロームといったことが起りにくい。
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ここでプロジェクト・バッファーとして、ステップ1の<余裕が無い見積り>の2倍の期間を設定して、クリティカル・パスとこのプロジェクト・バッファーを加えた期間を工期と定める。このように設定したときの工期は、完了確率90%の期間となって<十分余裕がある見積り>となる。
ステップ1と2をまとめると、余裕の管理を個々のアクティビティ担当者から、プロジェクトの管理者に移行した結果、各アクティビティ担当者は余裕のない期間で作業をしなければならないが、プロジェクト全体としては十分余裕がある状態になっている。
- プロジェクトの管理者はクリティカル・パスとプロジェクト・バッファーの管理に注力する。即ち、クリティカル・パス上のアクティビティが遅れたら、プロジェクト・バッファーからその遅れ分を供出する。
すべてのアクティビティの完了時にプロジェクト・バッファーが少しでも残っていたら工期到達前にプロジェクトが完了したことになる。
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なお、工期を<十分余裕がある見積り>の三分の二に短縮してもまだクリティカル・パスの2倍の長さがあるので、工期としてはこの程度の期間を設定するのが実際的と謂われている。クリティカル・チェーン法が工期短縮問題に効果があるとされる所以である。
以上のステップの1、2、4を図示します。
(図中のA、B、C、D 及び A’、B’、C’、D’はアクティビティを表す。)