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PM雑記帳

■PM Tools A to Z_No.29
  Q&A「見積り技法」

2005.07.27

皆さまからのご質問をベースにトピックを選定しています。
今回は2回目で、見積り技法について説明します。

Q:見積り技法について

PMBOKで説明されている見積り技法について、具体的な適用場面などについて教えて欲しい。

A:見積りには、スケジュールの見積りとコストの見積りがあります。PMBOK2000年版では、それらに適用す
る見積り技法の主なものとして以下が挙げられています。
(PMBOKで示されている見積り技法すべてを挙げているわけではありません。)

1.スケジュールの見積り(PMBOK「アクティビティ所要期間見積り」プロセス)
  (1) 類推見積り(Analogous estimating)
  (2) 定量ベース所要期間(Quantitatively based durations)

2.コストの見積り(PMBOK「コスト見積り」プロセス)
  (1) 類推見積り(Analogous estimating)
  (2) 係数モデル見積り(Parametric modeling)
  (3) ボトムアップ見積り(Bottom-up estimating)

それでは、これらを見ていきましょう。

1.(1) 類推見積り(スケジュール)

類推見積りはトップダウン見積りとも呼ばれ、PMBOKで言うところの「専門家の判断」の一形式です。これは過去の類似のアクティビティに関する実績値を用いて、アクティビティ期間を類推して見積るものです。その適用場面としては、プロジェクトの初期段階など、まだ見積りに関する詳細情報が限られているような状態の時です。
なお、そのような場面では、まだアクティビティまで十分に要素分解(前回号参照)されていないことも多く、したがって、もっと大きなくくりでプロジェクト全体の所要期間の概算を見積るような場合にもこの技法は適用されます。
類推見積りの精度は一般に低いと言われていますが、引用する過去のアクティビティやプロジェクトが実質的に見積り対象に類似している場合や、見積り者が必要な経験と専門知識を持ち合わせている場合には、その信頼性は高まります。
類推見積りは、現実にプロジェクトの初期段階ではよく使用されますが、それを有効にするのが組織における過去のプロジェクト情報の蓄積です。プロジェクトの予実情報とその周辺の分析情報を確実にナレッジ・ベース化して、それを必要に応じて利用できるようにする仕組みが重要です。

1.(2) 定量ベース所要期間

見積り種別毎の数量に各々の生産性を表す単位数を乗じて見積る技法です。例を挙げると、開発対象アプリケーションが有する画面の機能(入力/出力/照会など)とそれらの複雑度及び画面数が把握できており、かつそれぞれの組合せ毎に標準的な所要期間が分かっていれば、乗算と加算で画面系の開発期間を見積ることができます。
この標準的な所要期間を定めるためには、過去のプロジェクトに関する当該実績情報の蓄積が必要なことは明らかです。

2.(1) 類推見積り(コスト)

ここの類推見積りの説明としては、前記1.(1)の期間に関する類推見積りの説明の通りです。その見積り対象がアクティビティやプロジェクトの期間ではなく、それらのコストあるいはコストを得るための工数となります。

2.(2) 係数モデル見積り

これはプロジェクトのコストを算定するための数学モデルを設定して、そのモデルにパラメータを入力して見積りを得る方法です。したがって、見積り精度は、入力するパラメータが容易かつ正確に定量化可能であることと、モデルの現実への適合度に依存します。モデルの適合度を高めるためには、過去のプロジェクト情報の活用とフィット・ギャップ分析などによるモデルのブラッシュ・アップが必要です。
モデル作成のための具体的な方法の例としては、前記1.(2)に挙げた例で、画面作成標準所要期間の代わりに画面作成標準工数を適用する場合があります。また、プログラム・ソースライン数と生産性からプログラム開発工数を見積ることもよく使用されます。最近ではソースライン数の代わりにファンクション・ポイント値を使用する例も見られます。(ファンクション・ポイント法については、当連載PMBOKドリルダウン!No.18〜No.21を参照ください。)
なお、これらの例のように、現実の当該見積りモデルは開発規模を算定するものです。したがって、@開発規模の見積り、A生産性指標等からスキル別工数規模への換算、Bスキル別コスト単価から部分・全体コストの算定、のようにコストに変換します。

2.(3) ボトムアップ見積り

これは、個々のアクティビティ、又はその上位レベルであるワーク・パッケージ(WBSの最下位層)のレベルでコストを見積って、その積算でプロジェクトの総額を算定する技法です。この技法を適用するためには、WBSがワーク・パッケージ・レベル及びアクティビティ・レベルまで正しく要素分解できていることが必要です。したがって、プロジェクトの初期場面ではあまり使用されません。
なお、見積り精度は要素分解の結果の正しさに依存しますが、見積り精度は他の見積り技法に比べて高くなります。


これらの見積り技法の適用場面を図示します。

いずれの見積り技法においても、その適用のためには、過去のプロジェクト情報の蓄積とその活用プロセス、及び見積りプロセスの充実化がポイントになります。


参考文献:
  1. PMBOK(R) ガイド2000年版 PMI
  2. PMBOK(R) ガイド第3版 PMI

※PMBOKはProject Management Instituteの米国及びその他の国における登録商標です。