HOME > PMウェブ・サービス > PM課外授業 > PM Tools A to Z-人的資源マネジメント(2)
PM雑記帳

■PM Tools A to Z_No.16
  人的資源マネジメント(2)

2005.01.19
今回は前回に引き続きPMBOKにおける第9章「プロジェクト人的資源マネジメント」知識エリアにある「チーム育成プロセス」のツールと技法「チーム形成活動」に関連して、チーム育成(team development)のための動機付け理論について紹介します。

始めに、プロジェクトにおけるチーム育成の意味を確認しておきましょう。

プロジェクト・マネジャーの責務は担当しているプロジェクトの成功裏の完遂です。そのためには、チームをまとめて正しい方向にメンバーを導くことが必要になります。
また、プロジェクトでは、通常その開始時点(の前後)でチームが編成されますが、その段階ではまだプロジェクトの要件に沿ったメンバーが集められているとは限りません。 よしんばメンバーが所定のスキルや経験を有していても、直ちにチーム(※)として機能するかと言えばそれも難しいのが普通です。このような状態の集団を真の意味でのチームにすることがチーム育成ということになります。

  「チーム」とは「集団として目標を持ちそれを達成するために形成される組織」を言い、あるカテゴリ分けの結果として作られる「グループ」とは異なる概念です。

もう少し具体的にチーム育成を見ていきましょう。

プロジェクトの開始時点では、チームメンバー全員が同じベクトルを持つよう意識合わせが必要になります。即ち、すべてのチームメンバーにプロジェクトの目的と目標を正しく認識させ、その上で各々の任務を理解させる必要があります。また、メンバー間で新たにコミュニケーション・パスを築くことも重要でしょう。通常、キックオフ・ミーティングを開催してこれらを行います。

キックオフ以降も、プロジェクト・マネジャーはプロジェクトの全期間を通してチームメンバーの士気を高め、維持していかなければなりません。また、メンバー自身にも、積極的にプロジェクトの経験を吸収するべく周りに働きかけてアドバイスに耳を傾ける姿勢が求められます。メンバーにこのような自己向上の姿勢をとらせるように導くことも、チーム育成のポイントです。

したがって、プロジェクト・マネジャーには、プロジェクトマネジメント・スキルと共に、チーム育成のためのマネジメント理論、組織論、カウンセリングやコーチングなどの知識・スキルも身につけておくことが求められます。

以下に紹介するチーム育成のため理論はプロジェクト・マネジャーにとって知っておくべきものと言えます。

・動機付け理論:
    (1)マズローの「欲求階層」(Maslow’s hierarchy of needs)
    (2)ハーツバーグの「衛生理論」(Herzberg’s hygiene theory)

  動機付け理論とは、人々がある行動を起こす理由や、その結果期待された成果を挙げるための働きかけ方などを提示するもの。

・マネジメント姿勢に関する理論:
    (3)マクレガーの「X理論・Y理論」(McGregor’s X theory, Y theory)

1.マズローの「欲求階層」
  人間は自己の欲求を満足させるために努力する。その欲求内容には、最下層の「基本的な生理的欲求」から、最上層の「自己実現に対する欲求」まで、5つの層がある。下位の欲求が満たされたら、もはやそれは動機付けではなくなり、動機付けはその上の層に関するものになる。最上層の「自己実現に対する欲求」は、それが満たされても動機付けの効果はなくならず一層強い動機付けになる。如何に最上層の状態にするか、その動機付けがポイントになる。
  第1層:基本的な生理的欲求(空腹、睡眠など生命維持のための欲求)
  第2層:安全と治安に対する欲求 (災害や病気からの回避、衣服や住居などの安定的な維持を求める欲求)
  第3層:社会的欲求(集団に所属し仲間からの愛情を求める、愛と帰属の欲求)
  第4層:自尊心の充足に対する欲求(承認、尊敬、独立を求める欲求)
  第5層:自己実現に対する欲求
(自分がなすべきことを果たすために自己の成長や発展を求める欲求)

2.ハーツバーグの「衛生理論」
  「動機付け−衛生理論」とも言う。
動機付けには衛生要因と動機付け要因の2つの要素がある。
衛生要因は作業環境に関係し、不満足感を防止する。衛生要因の例としては「賃金」、「労働条件」、「人間関係」など。これらが不足すると職務不満足を引き起こす。
動機付け要因は作業の本質や機能を果たすことで得られ、満足感につながる。動機付け要因の例としては、「達成すること」、「承認されること」、「責任」、「昇進」など。
  
3.マクレガーの「X理論・Y理論」
   マネジャーは自分の部下を以下のようにみなしてマネジメントしている。
   ・X理論(X理論信奉マネジャー):
  1)
2)
 
3)
普通の人間は生まれつき仕事が嫌いである。
大抵の人間は、強制、命令、処罰などを伴う企業目標達成のために十分な力を発揮することはない。
普通の人間は命令されることを好み、責任を回避したがり、野心をもたず、安全を求める。
   ・Y理論(Y理論信奉マネジャー):
  1)
2)
3)
4)
5)
6)
仕事で心身を使うのはあたりまえのことである。
統制や威圧のみが従業員をして企業目標達成に努力させる手段ではない。
努力の度合いは目標達成に伴う報酬次第である。
普通の人間は安全が脅かされぬ限り責任を引き受け、かつ進んで責任をとろうとする。
企業内の問題を解決しようとする能力は、大抵の従業員に備わっている。
現代の企業においては、従業員の知的能力は僅かしか生かされていない。
   マクレガーは、X理論からY理論への転換によって、組織の雰囲気が根本的に変わると指摘している。


参考文献: 1.PMBOK(R) ガイド2000年版 PMI
2.PMP(R) Exam Prep-Fourth Edition, Rita Mulcahy, RMC Publications, Inc.
3.経営戦略・組織辞典 東京経済情報出版
4.心理学用語辞典 @forestmarch

※PMBOKはProject Management Instituteの米国及びその他の国における登録商標です。