■PM Tools A to Z_No.8
アーンド・バリュー・マネジメント(3)
2004.09.22
今回はサンプル・プロジェクトを使ってEVMの有効性を確認します。
サンプル・プロジェクトとして、工期24週間、予算2600万円のプロジェクトを想定します。コスト計上の最小作業単位はワークパッケージ・レベルとします。即ち、コントロール・アカウントはワークパッケージ・レベルに設定した例です。
◆コスト・ベースラインの設定(計画段階)
当プロジェクトはワークパッケージ(作業)が10個(A〜J)、工期24週間、予算2600万円であり、各ワークパッケージの所要期間、計画コスト(PV)、及びコスト・ベースラインは表1の通りとします。
<表1> (単位:10万円)

なお、個々のワークパッケージにおけるアーンド・バリューの測定方法(予算の計上方法)は、『作業開始時にその作業に割り振られた予算の20%』、『作業の途中にマイルストーンを設けてそれを達成した時に40%』、そして『その作業すべてが完了した時に残りの40%』を計上する方法をとるものとします。
◇アーンド・バリュー測定(予算計上)方法
ちなみにアーンド・バリュー測定方法には以下のようなものがあります。
- 作業開始時に計画コストのa%、作業完了時に残りの(100−a)%を計上する方法です。これには25%-75%法、50%-50%法、0%-100%などがありますが、”a”はプロジェクト内で適宜に決めることができます。なお、この計上方法は作業期間が比較的短いものに適用します。作業期間が長いと計上の間隔が開きすぎるためです。
- 各作業の中にマイルストーンを幾つか決めておき、そのマイルストーンを達成した時に計画時に決めておいた割合の計画コストを計上します。本例ではこれに近い方法を採っています。
- 作業の開始から終了までの間で報告者が自由に計画コストを計上する方法です。報告者の恣意が入る恐れがあります。
上記以外にも、プロジェクトや組織でアーンド・バリューの測定方法は種々あるはずですが、この測定方法はプロジェクト開始時にすべてのメンバーに周知徹底しておかなければなりません。プロジェクトの一部を外部に発注する場合も同様です。
◆アーンド・バリューと実コストの推移(実行段階)
今、プロジェクトが開始されて工期の3分の1である8週間が経過しました。この時点の進捗を見てみます。 表2は予定された作業(表1)の進捗状況を出来高(アーンド・バリュー)で表したものです。各作業のステータス(完了、途中、未着手)も示されています。 表3はその時点までに実際に消費したコストの推移を表しています。
<表2>アーンド・バリューの推移 (単位:10万円)
表2から分かること:
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予定作業期間が3週間の作業Aは、途中のマイルストーンはキープしたが、結局完了が1週間遅れました。作業Bは、作業Aの遅れの分開始が遅れ、まだ完了していません。作業Cも開始が1週間遅れました。作業Dは何とか予定通り開始できました。 |
表3から分かること:
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作業Aは150万円の計画に対して200万円費やしました。作業Bは250万円の計画に対して既に300万円費やしていますがまだ完了していません。作業Cは開始の週は50万円の計画でしたが、既に100万円費やしています。開始が1週間遅れたのでスケジュールのキャッチ・アップのためにリソースを多く投入しているのかもしれません。作業Dは予定通りのコスト消化状況です。 |
さて、皆さんは当該プロジェクトの現時点の進捗をどのように判断されたでしょうか? 特に表2(アーンド・バリューの推移)が無いとしたらどうでしょう? もしかしたら以下のように思われたかもしれません。
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「プロジェクトは3分の1経過したところで、コスト(工数)は予定よりも多く
かかっているが、着手しているべき4つの作業はすべて着手済であり、そのうち
完了しているべき2つの作業は1つが完了、他の1つは1週間遅れで来週にも
完了しそうである。遅れは僅かなように見えるし、プロジェクトはまだ3分の2
の期間があり、今の遅れは十分挽回できそうだ。」 |
EVMを適用してみましょう。
◆EVMが教えてくれること
EVMの3つの基本値(PV、EV、AC)の推移をグラフ(図1)にしてみます。
<図1>
図1から分かること:
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プロジェクトの開始から8週間経過したところで、コストの増加が目立ってきており、スケジュールにも遅れがあるようです。
EVMにより詳細な分析をします。 |
◇各指標値の算出
- 計画
完了予定予算
予定工期 |
BAC = 2600万円
24週間 |
- 基本値の測定
測定時の計画価値(予算)
アーンド・バリュー
実コスト
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PV = 500万円
EV = 400万円
AC = 650万円 |
- 現状把握
コスト差異
スケジュール差異
コスト効率指数
スケジュール効率指数 |
CV = EV−AC = 400−650 = −250万円
(250万円のコスト超過)
SV = EV−PV = 400−500 = −100万円
(100万円分のスケジュール遅延)
CPI = EV/AC = 400/650≒0.615
SPI = EV/PV = 400/500 = 0.8 |
- 完了時予測
今後発生するコスト予測
完了時総コスト予測
予測工期
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ETC =(BAC−EV)/CPI = (2600−400)/0.615
≒3577万円
EAC = AC + ETC = 650 + 3577 = 4227
(4227−2600 = 1627万円のコスト超過)
予定工期/SPI = 24/0.8 = 30週間
(6週間の工期超過) |
分析の結果、このままのパフォーマンスを続けるとコストが予定の1.6倍(4227÷2600)以上かかってしまいそうだということが分かりました。また、工期も6週間超過と予測されますが、もしコストを当初の1.6倍かけられないとなると、スケジュールがさらに遅れることは必至です。
これはもう、プロジェクトは
現時点で既に相当危機的状況だということです。今、抜本的な手を打たなければならないことは明らかでしょう。
◆CPIとSPIのグラフ
ここで、これまでの8週間のCPIとSPIの推移を見てみましょう。
図2から分かるとおり、CPI、SPIともに1.0以下でかつ悪化傾向にあります。特にCPIにその傾向が顕著に現れています。コスト増加などの原因を追究することも対策を立てるときのヒントになります。
<図2>
以上、EVMの有効性を見てきました。
さて、EVMはプロジェクトの現在及び将来を客観的に評価する方法として有効ですが、これは測定するEVMの基本値(PV、EV、AC)の精度に依存することは明らかです。この精度は、プロジェクト計画書の精度と連動しているはずです。
適正なプロジェクト計画書を作成し、それを的確に維持・更新するためには、プロジェクト遂行組織やその母体組織におけるプロジェクトマネジメント成熟度が高くなければなりません。
プロジェクトを繰り返し成功に導くための一つのキーワードは、「プロジェクトマネジメント成熟度の向上」ではないでしょうか。
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http://www.pm-university.com/tool/acess-top.php
| 参考資料 |
アーンド・バリューによるプロジェクトマネジメント 第2版
Quentin W. Fleming & Joel M. Koppelman, PMI(東京支部監修)
日本能率協会マネジメントセンター |