■PM Tools A to Z_No.5
スケジュール作成技法(3)
2004.08.11
今回は、スケジュール作成技法の締めくくりとして、プロジェクト・スケジュール作成の際に時として検討しなければならないスケジュール短縮問題について見ていきます。
各作業の順序関係と所要期間を見積り、PDMやADMのスケジュール作成技法によりクリティカル・パスを明らかにして工期を算出することはNo.3で説明しました。また、要求された納期や途中のマイルストンに間に合う確率を、スケジュール・リスク分析という形で推測することはNo.4で説明しました。
次に、もし算出した工期が要求された納期より長い場合、これは現実によく起こる問題ですが、その工期を要求された納期まで短縮する必要が生じてきます。プロジェクト内の所定のマイルストンに間に合わない場合も同様です。
ここで、スケジュール短縮技法を3つ紹介しましょう。
- 再見積り
- ファスト・トラッキング(Fast tracking)
- クラッシング(Crashing)
因みに、2と3は、PMBOK(R)ガイドでは、「タイム・マネジメント」の「スケジュール作成」プロセスにある『所要期間の短縮』項目で簡潔に説明されています。
◆再見積り
再見積りは最初に採るべきアプローチでしょう。各作業の所要期間見積りは正確かどうか、つまり、正しい前提条件のもとで適切な方法で見積ったかどうかを再度確認します。さらに、見積りの際に判明した課題は解決できるのか、識別されたリスクへの対処方法はあるのか、これら課題やリスクへの対応により各作業の所要期間見積りは短縮可能か、逆に短縮により新たに生じるリスクは何か、などの点も併せてレビューし、結果としてクリティカル・パスが短縮可能かどうか調べます。なお、各作業の所要期間が変わるとクリティカル・パスも変わる場合があるので注意が必要です。
◆ファスト・トラッキング
ファスト・トラッキングは現実にはよく使われます。これは、特にクリティカル・パス上の作業間の順序や依存関係を見直し、リソース上の制約を考慮しながら並行作業を増やすことで工期を短縮する技法です。ファスト・トラッキングではリスクの予見が重要です。即ち、工期短縮の効果と、短縮により新たに生じるリスクを的確に認識しておくことです。また、短縮によるクリティカル・パスの変化にも注意します。
ファスト・トラッキングの例を挙げましょう。
- 前作業の完了を待って開始する後作業を、その完了を待たずに先行開始して並行して作業します。例えば、詳細設計が完了する前に、設計がある程度できている部分からコーディングを開始するなど。この場合、詳細設計の完了レビューが行われていないため、コーディングに手戻りが発生するリスクがあります。
なお、この前倒しした期間をリードと呼びます。リードについては後で説明します。
- プロジェクト・ネットワークの構造を変えることで、並行作業を増やします。例えば、No.3で説明した作業間の依存関係のうち、FS(終了−開始)の関係をSS(開始−開始)やFF(終了−終了)の関係にできれば、その部分のパス(経路)が直列パスから並列パスになるのでスケジュールの短縮に効果があります。
◆クラッシング
クラッシングは、作業間の依存関係が変更できずファスト・トラッキングのアプローチが採れないような場合に使われる技法です。これは、クリティカル・パス上の作業に要員など必要なリソースを追加投入し、その作業期間を短縮することで工期の短縮を図る、というものです。
クラッシングは、通常、コスト増加を伴うので、追加コストとスケジュール短縮効果とのトレードオフを見る必要があります。例えば、計画の2倍の要員を投入しても期間が単純に2分の1にならないことは承知の通りです。短縮により新たに生じるリスクを的確に識別し、対応計画を策定しておくことが重要です。
プロジェクトの計画段階における、クラッシングの一般的な手順は次の通りです。
(1)クラッシング対象作業の選定:
通常はクリティカル・パス上の作業がクラッシングの対象になります。対象作業の選定は、プロジェクトの事情に即した観点から適宜な方法で行います。よく使われる方法を幾つか挙げます。
- 短縮コスト(1日当りの必要コスト)の小さい作業から優先順位づけする。
- なるべく早い段階で行う作業の優先度を上げる。(予見していないリスクの対応などのために時間的な余裕を持ちえる)
- 所要期間の長い作業の優先度を上げる。(短い作業に比べ短縮の影響が少ない)
- 要となる作業の優先度を上げる。(多くの後続作業への影響を減じる)
など
(2)必要リソースの手当て≪当該プロジェクトの中で手当てする場合≫:
選定された作業と並行した、スケジュールに余裕のある作業のうち、必要かつ適切なリソースがあり、リソース供出後の影響の少ない作業からリソースを振り向ける。
(2)´必要リソースの手当て≪当該プロジェクトの外から手当てする場合≫:
選定された作業に対して、そのプロジェクトの外部から必要かつ適切なリソースを投入する。
(3)クリティカル・パス再計算:クリティカル・パスを再計算して短縮効果を確認する。
(4) (1)→(2)((2)´)→(3)を、短縮目標が達成されるか、または短縮可能限界まで繰り返す。
手順(2)において、特に必要リソースとして人的リソースが多いIT系プロジェクトでは、要員の適性やスキル、モラール(morale)などを考慮した現実に即した検討が必要です。前回紹介したCPM(Critical Path Method)は期間短縮を図る技法ですが、今述べた点でITプロジェクトに対しては適用しにくいというのが筆者の感想です。
また、手順(3)では、短縮によるクリティカル・パスの変化にも注意します。
プロジェクトの実行段階でも、進捗遅延などにより以後のスケジュールをクラッシングしなければならない場合があります。
短縮の手順は、(1)で、「緊急を要する作業を最優先とする」ことを加える以外は計画段階のときと同様です。留意すべきことは、要員を供出しなければならない作業への影響と、新たな要員が投入された作業の初期段階の混乱を最小限にとどめることです。特に後者では、新要員の当該作業への理解度、コミュニケーション・パスの増加などから、生産性の低下などが生じる場合があるので、的確なマネジメントが欠かせません。
◇リード(Leads)とラグ(Lags)
作業間の依存関係に時間的なずれがある場合、それを把握するためにリードとラグが使用されます。リードはファスト・トラッキングで適用されます。
| リード: |
後続作業の開始を前倒しするような論理的順序関係の修正。例えば、10日間のリードがあるFS(終了−開始)の依存関係では、後続作業は先行作業の終了よりも10日前に開始することができる。 |
| ラグ: |
後続作業の開始を遅らせるような論理的順序関係の修正。 例えば、10日間のラグがあるFS(終了−開始)の依存関係では、後続作業は先行作業が終了して10日間経たないと開始できない。 |