■PM Tools A to Z_No.4
スケジュール作成技法(2)
2004.07.28
今回は、前回紹介したアロー・ダイアグラム法を、スケジュール・リスクの分析に利用する方法について説明します。始めにアロー・ダイアグラム法であるPERT技法を紹介しておきます。
◆PERT(Program Evaluation and Review Technique)
PERTは、1950年代後半に米国海軍ポラリス・ミサイル開発プロジェクトで実用化された日程計画・管理のための技法としてあまりにも有名です。なお、同様の技法として、費用との関係を見ながら工期短縮を図ることをねらいとしたCPM(Critical Path Method)も、同じ頃にデュポン社工場建設のために実用化されています。
PERTの用法の一つとして、確率・統計理論を用いてプロジェクトに内包するスケジュール・リスクを分析することが挙げられます。例えば、各作業の所要期間を1通りではなく、楽観値、最可能値、悲観値の3通りで見積り、個々の作業のバラツキ具合を基にプロジェクト工期のバラツキ具合を予測して、スケジュール達成の可能性を予見するなどのように使われます。これを3点見積法と呼びます。
◇3点見積法
前回(No.3)掲げたアロー・ダイアグラム(実はPERT図)の例を使用して、各作業を以下のように3点で見積ったとします。
<図1>
ここで3点見積時の平均、分散、標準偏差を求めます(表1参照)。これらは次頁に掲げた算式で計算されます。なお、これは各作業の所要日数の分布としてベータ分布(図2参照)を適用した場合です。因みに別の分布、例えば三角分布や正規分布などを適用する場合もあります。
<図2>
ベータ分布の期待値(平均)・分散・標準偏差:
・期待値(平均μ) =(楽観値 + 4 × 最可能値 + 悲観値)/6
・分散(σ
2)=(悲観値 − 楽観値)
2/36
・標準偏差(σ)=(悲観値 − 楽観値)/6
工期算出の前提:
・工期の平均と分散
工期はクリティカル・パスにある各作業の平均日数の和で求められ、その分散も
クリティカル・パス上の各作業の分散の和で求められる。(平均と分散の加法性)
・工期の分布
このときの分布は中心極限定理(個々の事象の分布を重ね合わせると正規分布に
近づく)により正規分布にしたがう。
<表1>
計算の結果、このプロジェクトの平均工期は10.50日、その標準偏差は0.90日となりました。
◆スケジュール・リスク分析
ここで、このプロジェクトが95.5%(平均±2σ)、及び99.7%(平均±3σ)の確率で完了する場合の工期の下限と上限をそれぞれ計算してみましょう。なお前述の通り、工期の分布は正規分布にしたがいます。
上表から、このプロジェクトは開始後8.7日から12.3日までの間でほぼ確実(確率95.5%)に、また、7.8日から13.2日の間ではほとんど確実(確率99.7%)に完了すると推測できます。
もし、これに続くプロジェクトがあれば、それは14日目以降に始める計画を立てておけば、その開始が遅れるリスクは非常に少ないと言えるでしょう。
次にこのプロジェクトが工期10日で完了する確率を求めてみましょう。
これは標準正規分布表などを利用して算出します。
結果は、上記のように完了の確率は30%弱となります。これでは工期10日をコミットするにはリスクが大きすぎるかもしれません。
このように、確率・統計理論を用いて解析的にプロジェクトの工期に対する不確実性の度合いを予測することができます。この不確実性がスケジュール・リスクです。
なお、同様の分析をモンテカルロ法というシミュレーション技法で行うこともできます。
◆モンテカルロ・シミュレーション
モンテカルロ・シミュレーションはリスク分析でよく使われる技法です。これは、乱数を用いて幾度もシミュレーションを繰り返し、その結果得られる測定値の平均で真の値を推定しようというものです。解析的に解を求めることが難しい問題に有効な方法です。
では、モンテカルロ・シミュレーションをスケジュール・リスク分析に応用してみます。
各作業の所要期間のばらつき方はあらかじめ設定した分布に従うものとします。これらの分布にしたがって生成される乱数を各作業に与えてプロジェクト工期を求め、このシミュレーションを繰り返して工期の分布を求めます。なお、算出にはモンテカルロ・シミュレーション用のソフトウェアを利用します。
図1の例に対して、モンテカルロ・シミュレーションを適用してみました。ただし、各作業の所要期間の分布は三角分布とし、また、クリティカル・パス上の作業のみをシミュレーション対象にしました。後者については、シミュレーションによってクリティカル・パスが変わることがあるので、本来ならばすべての作業を含めてシミュレーションする必要があります。以上のことから、前出の解析的に求めた結果と単純には比較できませんので、参考イメージとしてご覧ください。
<度数分布>
試行回数: 1000回
平均値: 10.96
標準偏差: 1.09
1000回のシミュレーションで工期の平均が10.96日、標準偏差が1.09日となりましたが、さらに試行回数を多くすれば、より確からしい値が算出されます。
このように、シミュレーションにより解析的方法と同様のリスク分析を行うことができます。
次回はもう一回スケジュール作成技法を説明します。スケジュール短縮技法の話です。
参考文献:1.経営実務シリーズ PERT入門 刀根 薫 著 東洋経済新報社
2.リスク分析・シミュレーション入門 James R.Evans, David L.Olsen 著
轄\造計画研究所 発行 共立出版